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疾患委員会

白血病・リンパ腫委員会

作成日:2012.11.26

更新日:2016.04.25

委員

康 勝好(委員長)、今村俊彦、真部 淳、足立壯一、多賀 崇、高木正稔

活動内容

小児白血病・リンパ腫の治療成績は、長年にわたる多施設共同臨床研究(以下、臨床研究)によって飛躍的に向上しました。 しかし、白血病・リンパ腫の中には、まれな病型であるなど、さまざまな理由から臨床研究に参加できない患者が多く存在します。 そのような患者の実態は不明であり、それらを含めた白血病・リンパ腫の全体像を把握することが重要です。 本委員会では、まれな白血病の実態調査、国際共同疫学研究への参加などを通して、 本邦の白血病・リンパ腫の病態の理解と診断・治療の改善を目指した活動を行っています。

活動歴と今後の計画の概要

白血病・リンパ腫委員会は、2006年に白血病委員会として発足し、2012年から白血病・リンパ腫委員会として再スタートした。
本委員会ではこれまでおもに「学会登録による白血病登録症例の疫学的解析」を行ってきたが、引き続き疫学的解析をおもな活動として継続していく。

1. 活動歴

当初白血病に関しては、学会として疫学登録データの蓄積がなかったため、本委員会の前半は疾患登録委員会の登録のための分類や手引きの作成に協力した。

2006年から本学会は疾患登録委員会の下に登録事業を開始した。この事業は、日本小児血液・がん学会が日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)データセンターに疾患登録事業を委託し、各施設がWeb上で患者登録を行い、データセンターは学会登録番号を発行し、その患者対応表は各医療施設が保管するというシステムである。

白血病の臨床研究はJPLSGが中心となっており、JPLSG参加施設で診断される症例は、臨床試験対象外症例も含めてJPLSG登録が行われ予後追跡が行われている。学会疾患登録とJPLSG登録は1対1ではなく研究主体が異なるが、両者が有機的に協力することで疾患登録の精度を高めることが期待される。

また国際疫学研究組織であるCLIC(Childhood Leukemia International Consortium)に本委員会を窓口として積極的に参加することになった。

① これまでの疫学的解析の結果

日本での推定14歳以下の人口は1693万人(13%)で、年間の血液がんの発生数は、ALL 550例/年、AML 160例/年、CML 20例/年、MDS 20例/年、リンパ腫 130例/年で合計880例/年である。2006年から2010年の急性白血病の登録は3,391 (678例/年)、ALL 2,464(73%) (493例/年)、AML 891(26%)(178例/年)、その他36 (7例/年)であった。それぞれの年齢分布、FAB分類、表面マーカー分類、染色体・遺伝子型を検討した。日本で1歳以下のM7が多いことが国際的に注目されたことがあったが、M7のうちde novoは94例で、ダウン症候群に伴う症例が112例で多数を占めた。昨年のCLICで本結果を報告したところ、世界的にダウン症候群の出生率の違いがあるのかどうかが議論になった。

② 新型インフルエンザアウトブレークの白血病発症に対する影響

2009年の新型インフルエンザアウトブレークの白血病発症に対する影響をみるために、4年間の登録データの診断時期(月)と診断地域(都道府県)に分けて分布の経年変化を比較したところ、2009年とそれ以前で明らかな差を認めなかった。2011年までのデータを追加して分析する必要がある。

③ T-ALLの診断地域分布の偏り

日本の北部では発症が少ないのではないかという仮説があったが、症例数が十分でないこともあり、一定の傾向を見出すことは出来なかった。

2. 今後の計画

① これまで行ってきた疫学研究の継続
② 福島原発事故の影響についての調査

2011年3月に発生した福島原発事故の影響について、学会での白血病全国登録データを基にして、地域別の小児白血病発症の変動を注意深く追跡していく(生態学的疫学研究)。

③ 国際疫学共同研究CLICへの参加

附.国際疫学共同研究参加計画書(案-現在検討中)抜粋

01. 背景

国内の疾患登録データを利用した疫学研究と同時に、希少な小児白血病の疫学研究においては、グローバルな協力が大きな成果をもたらす可能性がある。国際間の比較は、病因解明において有用な方法論である。近年もたらされた遺伝子レベル・詳細な表面マーカーの分類分布の違い、Mel Grievesらの胎内発生の仮説の検証(乳幼児期の感染症の影響)など、興味深いテーマが存在する。

02. 研究の目的

本疫学研究において、我が国の小児白血病・リンパ腫患者(学会疾患登録事業の登録患者対象)における新規症例の診断情報を収集し、Childhood Leukemia International Consortium(CLIC)にデータを集積し世界各国のデータとともにプール解析をすることにより、ALLとAMLおよびHL/NHLの割合及びWHO分類による地理的な差を国際的に明らかにする。また季節性変動、新型インフルエンザ他の流行性感染症、福島原発事故などによる小児白血病・リンパ腫の新規発症に及ぼす影響を疫学的に調査する。

03. 対象

1. 対象症例

小児血液・がん学会疾患登録事業に登録された白血病・リンパ腫患者

2. 対象、調査並びに期間
  1. 1)対象患者の疾患登録事業における登録年:2006~20XX年
  2. 2)JPLSG登録症例においては、中央診断データの収集
    (対象患者の違いをどのように扱うか?)
  3. 3)疫学研究実施期間:2011~20XX年
3. 推定される症例数など

年間に疾患登録事業に一次登録される小児白血病登録症例は約700例、リンパ腫は170?180例と推定される。(この症例のうちJPLSG登録症例が毎年の二次調査対象症例となる?)

04. 調査方法

1. 疾患登録事業の新規登録データの入手

本研究事務局は、毎年X月にJPLSGデータセンターから新規診断白血病・リンパ腫登録症例データ(登録施設並びに症例登録番号)を受け取る。毎年の新規登録症例は登録前年の1月1日から12月31日の期間に新規診断された症例である。
(検討課題)研究対象として以下の3種類が考えられ、1と3は対象に差がある。また研究主体がことなるため研究内容によって、審査などの手続きが異なる。

  1. *1.対象を学会登録症例とし、そのデータを基本として解析を行う場合
  2. *2.上記を対象に二次調査を実施する必要がある場合。
  3. *3.JPLSG登録データを用いる場合
2. 二次調査の実施

本研究事務局は、JPLSG登録症例について学会登録番号を患者識別番号として用い、中央診断情報を回収し集計と解析を行う。

3. 二次調査内容

疫学的に重要なテーマが生じた際に、本委員会が主体となり、学会会員を対象に登録症例に対して二次調査を計画する場合がある(必要な場合適宜作成)。

4. 統計解析

(準備中)

05. 登録患者の匿名化と個人情報の保護

1. 症例の匿名化

疾患登録事業において登録症例には学会登録番号が付与され、診断名および患者重複を防ぐための最小限情報(生年月と診断年月、名前の頭一文字)が収集される。

06. 「疫学研究に関する倫理指針」遵守について

本研究は、「疫学研究に関する倫理指針」(平成19年8月16日全部改正、平成20年12月1日一部改正)(以下、「指針」とする)を遵守して実施する。